建設業界を変える社長の戦略と企業の成長:上毛資源株式会社 佐伯一氏

建設業界を変える社長の戦略と企業の成長:上毛資源株式会社 佐伯一氏

会社名:

上毛資源株式会社

代表者:

代表取締役 佐伯 一

取扱業務 総合建物解体工事/産業廃棄物収集運搬・処理/一般廃棄物収集運搬・処理/特別管理産業廃棄物収集運搬/リサイクル(再生骨材・木材)/資源回収/ビル管理・清掃全般・建物養生工事・引渡清掃

Q.いまの御社の事業内容について、教えてください

産業廃棄物の運搬と処分までが全体の半分ほどの割合です。35%くらいが解体工事で、木造からRC、30メートルくらいの高さまでのビルに対応できるだけの機材を揃えています。また、官公庁のビルメンテナンスとしてお掃除の仕事や、別会社では警備業もやっています。

やはり建物を壊すと廃棄物が出ますし、自社でリサイクルができるものもありますので、解体と産廃は非常に業務の関連性があると思います。今は3部門70名ほどの組織で、廃棄物事業部の人数が1番多いです。」

Q.これまで、どのようにして現在に至ったのか、教えてください

「元々は古物商でした。嘘か本当か分かりませんが、先代がリアカーを引っ張って段ボールなどの紙を集めていたと聞いておりまして、それは多分嘘でトラックだと思います(笑)。スクラップや古紙は業種的に古く、明治時代には事業としてありましたから弊社は超後発にあたるんですね。営業をしてもなかなか買ってもらえなくて、あまり儲からなかったようです。

ちょうど廃棄物に関する法律ができた頃で、これからはもう有価物を扱っていても勝てないので、新しく産廃をやるかと。また、鉄が欲しかったんですね。スクラップを集めるよりも、建物を壊すと鉄が出てくるのでそっちの方がいいんじゃないかとスクラップ解体業も始めました。解体するとゴミも出てくるし、ちょうど良かったなと。

そしてゴミを扱い始めると、新築の建物を作る時のゴミが出てきますので建設屋さんと上手くやりつつ、建物が建つと今度はビルのメンテナンスが必要になってきます。ビルのメンテナンスは少し前に始めた事業でしたが、壊して作ってメンテナンスをするという、建物の一生にちょうど上手く関わっているという感じですね。建物に寄り添うことで上手く事業が回っている形です。」

Q.現在の建設業界について、どう思われますか?

「今の建設業界には本当に人がいないので、人さえいれば勝ち組になれますね。また、中にはそうでない業者さんもいらっしゃいますが、仕事には困らないように思います。仕事の総量はあるのですが、地域や場所の偏りがあるので、どこに出ていくのかという話ではないでしょうか。弊社は群馬から埼玉や東京へ行きますし、嗅覚の問題という気がします。

そういう意味では、会社に所属せず条件の良い所を渡り歩く人の方が稼げるのかもしれません。少し前なら熊本の半導体工場、今なら北海道で半導体工場を作っていて、そういう所へ行けば人手が足りませんから1人親方でも全然やっていけると思います。1人分を稼げればよくて、あまり拘束されずに自由に生きていきたいのであれば、それも面白いですよね。

あとは若い人がいなくて、20〜30代が少ない業界だと思います。なんとなくイメージが悪く、そこをどう変えていくのかというところなんでしょうね。企業単位で努力してはいるんでしょうけれども、職人さんになるメージが沸かないのかなと思います。不思議なことに、小学生くらいまでは大工さんって人気職なんですよ。中学生になると激減して、高校生になると皆無になります(笑)。

人気職のYouTuberも決して楽に稼いでいる訳ではないのですが、なんとなくインドアで綺麗な仕事をしているように見えて、額に汗して身体を動かす仕事は、今の子たちにとって魅力的ではないように映るんでしょうか。どうにも3Kがつきまとっているというか、下手すると兵隊みたいなイメージを持たれている気がします(笑)。

しかし、元々は憧れの職業的なものの1つではあるんでしょうから、もっと稼ぎやモノ作りのやりがいなどを仕事として上手く伝えなければいけませんね。今の子たちは、意外とやりがいや社会にどう貢献できるのかを大事に思っているようなので。もう少し働く意識も含めて、色々な仕事があることを若い時から教育した方がいいのかもしれません。

机に座って仕事をしたい人もいれば、身体を動かしたい人もいますが、日本人はいつまでたっても何の仕事をしていいのか分からない子が多いですよね。下手すると、大学を出ても就職先が派遣会社だったりして。何をやっていいのか分からないので、派遣会社へ行けば色々な仕事ができるんじゃないかと考える子が増えつつあるそうです。高校を出て働く子が減っているのも、建設業に若い人が少ない一因だと思います。」

Q.御社の成功要因について、教えてください

「産業廃棄物の運搬だけではなく、処分まで自社で可能な点は大きいと思います。中間処理施設も持っていますので、一連の流れができるということですね。

また、業界的にガラの良い人が多い訳ではないので、特に昔は(笑)。そうした業界にいる中でも真面目にやっていることや、車を青で統一して綺麗に見せたりするなど、クリーンに見えるようなイメージ戦略に気を配っています。クレーンも一般的なものではなくヨーロッパで主流の機械を取り入れていますし、解体で使うシートの色も普通はグレーが多い中で薄いグリーンのシートを使うなど、”ゴミ屋さん”というイメージをなるべく出さないようにしていますね。

コンプライアンスの関係上、最近は写真を掲載するのが難しいのですが、Facebookなどに重機の写真を載せると日本人よりも外国人のほうが反応してくれるので不思議です。弊社で使っているクレーンはオーストリアの会社が作っている物なのですが、愛好家グループがあったりして、重機はマニアが多いですね。どうやって手に入れるんだと聞かれたり、売ってくれと言われることもあります(笑)。

一応こうした情報発信もやっているのですが、弊社の場合は社名を書いた車で県内のあちこちを走り回っていることが大きいのではないでしょうか。知らない方と初めて名刺交換する時にも、しょっちゅう見かけますが何台走っているんですか?と聞かれたりしますので、目にする機会が多いんでしょうね。青に白抜きの文字なので割と目立つようです。」

Q.建設業で成功するためには、どのような組織や採用、教育が必要か?

「市内で走らせている車は30台くらいなのですが、他社に比べると数が多いですしカラーリングも特徴的なので、よく目にしているからこの会社は大丈夫なんだろう、それなりの会社なんだろうなという印象を持ってもらえる点は採用に活きているのかもしれません。よく見るということは、業界の中でもある程度の規模なんだろうと考えられてもいるようですしね。

組織と教育という観点からは、これからの建設業ってちゃんと社員化しないとダメだなと思います。若い人も含めて、今はある程度安定していなければ働きたがらないので、社員化は最低限のラインですよね。また、いかに土日の休みを確保していくのかも重要で、それは会社がちゃんと仕事を切らさずに運営していなければできないことでもあります。

また、弊社は天候に左右されない解体工事ですから稼働率が高く、大雪や台風でない限りは仕事をするので安定しているのですが、建設関係の専門業者は天候が大きく影響しますよね。年末から年度末はもの凄く忙しいのに、4月になるとぱたっと仕事がなくなるといった建築のサイクルがあるので、専門業者は安定して働けるような環境を作っていかないと厳しいのではないでしょうか。解体も全影響がない訳ではないのですが、多少は有利だなと思います。

また、1日の単価がもの凄く高くて、月の半分だけ働けば生活できる、そういうスタイルを好む人がいますよね。仕事がない日が休み、といった感じで。しかし、それを魅力に感じない人も多いので、昔から言われていることではありますが、多能工化も考えてあげないといけないように思います。型枠大工なら型枠大工だけという1つの仕事だけじゃなくて、もう少し幅を持たせてあげないと厳しいのではないでしょうか。」

Q.今後、建設業界はどうなっていくとお考えですか?

「やはり圧倒的な人手不足で、外国人も目立つようになってきました。弊社では雇っていませんが現場へ行くと多くなっているなと思いますし、言い方は悪いですが今後は彼らを上手く使っていかなきゃいけないんじゃないのかな、と感じますね。3年や、長くて5年で帰ってしまう人を、どうやって教育していくのか、いかに定住させるのかは難しいところですが、日本人より意欲的だったり身体を動かして働くのに抵抗がなかったりする人が多いので、ただ活用していくというよりは、ある程度現場を任せられるようにしていく必要があるのかもしれません。

群馬でも一時期問題になっていましたが、3年が到来する直前に実習生が逃亡するといったことがありますよね。結局、逃亡して働く先は建築現場なんですよ、不法で働いている訳です。ちゃんと教育して働ける環境を作ってあげたほうがいいのかな、とは思っています。不思議なことに、未熟な人は怪我をしやすいのですが、上がってくる事故報告は日本人ばかりで外国人はないんですよ。危機管理能力が高いのかもしれません。一方で、日本人はその辺りの感覚が鈍ってきているのかもしれませんね。

また、弊社は別会社で警備の事業をやっているのですが、それこそ天候のせいで当日キャンセルが普通に起こります。担当者が警備員に電話して終わっちゃうという感じなのですが、もちろん無給になってしまいますから、これをやっていると人が集まらなくなると思います。今はそれに慣れている人や、年齢が高くて1日〜2日の休みは気にしないという人たちが働いてくれていますが、これからは少し考える必要がありますね。

どの業界も人手不足で苦労していますが、警備もイメージが良くないので、ビルメンテナンスの求人に応募してくれた男性に”警備もやっているんですけど”、と声をかけると、ほぼ即答で”結構です”と断られてしまいます。一年中屋外で道路警備をしているイメージがあるようですが、弊社の場合は建設現場の出入りを警備する仕事が多いので、場合によってはエアコン付きのガードマンボックスがあったりと、割と環境が良いんですけどね。」

Q.御社の今後の展望をお聞かせください

「これまでにやってきたことを少しずつ広げていくしかないかな、というところですが、もう少し若い人が入りやすい環境を作りたいですね。今はまだいいかもしれませんが、少しずつでも若い人が魅力的に感じる環境を作らないと、結局20年も保たないんじゃないかな。

産廃も解体も仕事として需要がない訳ではありませんので、それを踏まえると人をどう入れてどう育てていくかという話になってくるように思います。今は技術者の年齢も上がってきていて、ベテランに任せておけば何でも出来てしまうような感じですが、若い人に一つ一つ教えていくということをやっておかないと、展望どころか10年後に会社がないということになりかねません。

仕事がしたいんだけど人がいないということになってしまわないように、いかに次へ繋げていくのか、ということが大事だと思います。」

佐伯一 プロフィール

佐伯 一 (サエキ イチ) 昭和44年12月3日生れ 54歳

北海道東海大学芸術工学部建築学科卒

職歴:清水建設株式会社・上毛資源株式会社 代表取締役社長就任

資格
ダイオキシン類関係公害防止管理者
建築物環境衛生管理者
特定建築物石綿含有建材調査者(建災防から講師委嘱)
産業廃棄物処理施設技術管理士(中間処理、破砕・リサイクル、焼却)

役職
(公社)群馬県環境資源創生協会 副会長兼前橋支部長
前橋市一般廃棄物処理事業協同組合 専務理事
NPO法人赤城自然塾 理事長(令和6年3月まで)

上毛資源(株)の概要
昭和41年に創業。古物商としてスタートし、現在は、産業廃棄物の収集運搬から処分前で行っている。解体工事は、小さな木造から大きなビル・工場まで形のあるものは何でも壊すべくチャレンジしている。ぐんまをキレイにする会社を目指し、ビルメンテナンス業にも力を入れている。建物の一生に寄り添う会社です。