内装×デザインで空間革命 成功を導く社長の戦略:株式会社NUB 阿部 大輔氏

内装×デザインで空間革命 成功を導く社長の戦略:株式会社NUB 阿部 大輔氏

会社名:

株式会社NUB

代表者:

代表取締役 阿部 大輔

取扱業務 家具デザイン・制作/内装デザイン・施工/特殊塗装・エイジング/クラフトワーク/アートワーク

Q.いまの御社の事業内容について、教えてください

「メインは内装工事全般です。弊社は基本的に、デザインから施工までを一貫して受け負うことを理念としているのですが、デザインから手掛けているのは業界内で珍しい立ち位置だと思います。もともとは家具などを作っていたのですが、そこから派生して空間全体をデザインできたらいいなという思いがあり、今のようなスタイルで仕事をするようになりました。デザイン込みの内装工事、といった感じですね。

お客様の事業としては、コーヒー店が多いです。初めの頃は美容院など、美術セットのような空間演出のご依頼が多かったのですが、最近はその空間の中でくつろぐ人がいるようなお店からお仕事をいただくことが増えてきました。場所としては世田谷周辺が一番多くて主に東京都内、埼玉県よりは東京都でのお仕事が多いですね。自社のホームページやInstagramからもお問い合わせをいただいていて、リフォームの相談なども来るようになりました。

内装工事から派生して、ランプシェードや照明器具などもデザインして作っておりますし、テーブルや小物など個別に物を手掛けるようなお仕事にも対応していて、多能工の職人さんのような、色々なことに手を広げるような感じですかね。特に何かルールがあるわけではなく、やりたいことがあれば少し外れた分野にもチャレンジするようなスタンスで仕事をしています。」

Q.これまで、どのようにして現在に至ったのか、教えてください

「美術大学のデザイン科で修士課程を修め、大学卒業後は椅子やテーブルなど家具のデザインをしていました。そこからの流れもあり、大きな家具を作っているようなイメージでお店なども作っている感じなのですが、最初は友人がお店をオープンするので手伝ってほしいという依頼からはじまりました。そこから、そのお店に来るお客さんの友人や知り合いが気に掛けてくれるようになり、紹介していただいて輪が広がっていき、現在もその輪がどんどん大きくなっている感じですね。」

Q.現在の建設業界について、どう思われますか?

「建設業界全般について思うことは、もう少し世の中に手で物を作る人へのリスペクトが深まっていけば良いなということですかね。人の手で作られているということを再認識してもらえるような流れがあれば、みんなが働きやすくなるのではないでしょうか。例えば六本木ヒルズ、あれを人が建てたという実感を持って見ている人はあまりいないと思うのですが、そうした物に対してみんなが”人間の手ってすげえな”と改めて思ってくれて、物の凄さがもっと浸透すると良いなと思っているんですよ、割と物理主義と言いますか。

私自身もそれほど大きな工事現場の経験はないのですが、工事と関係ない生活をしている一般の人たちは、現場で働いている人に少し怖いイメージを持っていたり、工事の音がうるさいなと思うことがあるかもしれません。しかし、皆さんの住んでいる家もそうやって作ってもらっているはずなんですよね。毎日当たり前のように使っている道路も同じで、その背景には人がいるのですが、あたかも人がいないかのように感じている人が多いのではないかと感じています。もう一回、原始的に物を作る人たちの凄さを再認識してもらえるような流れになって見方が変わると、仕事内容も変わってくるんじゃないかなと思うんですよね。

結局は発注者さんが出す金額によって待遇なども変わってきますので、ただただ作業員として使われているというよりは、物を作る人たち集団みたいな見え方になると良いのかなと思いますし、人手不足の状況も少しは改善するかもしれないなと思っています。」

Q.今後、建設業界はどうなっていくとお考えですか?

「私は一般的な建設業界には属さないポジションで仕事ができてはいるのですが、シンプルに良くなっていってほしいなというのはありますね。一般に取り上げられる機会も多い、いわゆる人手不足という課題に関しては、建設業だけではなくものづくり全般、家具屋さんなどの手で何かを作る人たちの仕事も含めて捉えると、先程お話したリスペクトの話につながるのかなと。

技術が進化している中で3Dプリンタやレーザーなども世の中に普及していますが、大きな物を作っている建設業ではまだ適用が難しいですし、一般的なイメージがあまり良くないこともあるのか若い人たちが少ない状況ではありますよね。私も大工が少ないという話は耳にしますし、積極的にというよりは結果的に職人になったという若い子を割と見かける一方で、例えば大工になりたくて大工になったという若い人にはあまり出会ったことがありません。

私の世代であればまだ、家具屋になりたいからなった、大工が格好いいと思って大工になったという人もいたので、そういう風にリスペクトされて職業の認知が広まればもっと若い人たちが入ってくるでしょうし、やる気のある人が入ることでものづくりのクオリティも上がっていくのかなと思っています。昔は家の隣で上棟している姿を見て”大工さんって格好いいな“と感じられていたものが、最近はプレカットで作業が速く進んでしまうので、一つの物に拘って取り組んでいる姿を見る機会が少なくなったことを思うと、少し寂しいですね。

インターネットの普及でYouTuberなどの新しい職業が生み出され、仕事の幅が広がったことで物理的に何かを作るということが若干時代遅れに感じられているのかもしれませんが、何かに凄く集中して物を作っている姿は時代に関係なく格好いいものだと思いますよ。」

Q.御社の成功要因について、教えてください

「デザイン事務所と施工会社が分かれていることが多い中、直接施主さんとデザインの打ち合わせをし、そのまま図面にして現場で作るという一貫した流れが、お客様の意図を汲んだものをそのまま形にできる点で強みになっていると思います。一緒にお店ができていく過程を楽しめるような進め方を心がけていますので、お客様のタイプに合わせてやり方や立ち位置を微妙に変えたりもしていますね。やはりネットで買物をするのとは違いますから、ものづくりとはなんぞや、といったことを常に考えながら仕事をしています。

また、少し変わったご依頼で、とても仲が良かったご祖父様のタンスを形見として実家から引き取ることになったものの、サイズが大きすぎて部屋に置くことができないので、分解してテーブルに作り直すことはできないか、というご相談をいただいたことがありました。構造を組み直す必要があるので誰にでもできる内容ではないのですが、私は木工もやるのでその延長線上にある大工仕事というイメージで、作業のメモリを変えて家具を作ったり大工仕事をしたりといった対応ができるんです。未だかつてタンスをテーブルにして納めたことはありませんでしたし、今のところこの1件だけですが、こうしたご要望にお応えできるのもデザインを含めて専門的な仕事ができるからこそなのかな、とは思いますね。

多能工に近いのかもしれませんが、機械を使うというよりは細かい手の動きがメインなのでもっと職人的ですし、ワンストップですからお客様の持っているイメージとの誤差が少ないということもあり、完成物に愛着を持っていただきやすい点もご紹介につながっているポイントかもしれません。もちろんスピード感など分業の良さもありますが、私が施主なら進捗を楽しみながら全体を見たいかなと思いますしね。

材料の選定については、年数が経ってもくたびれて見えない、味があってお店が育っていく感じを楽しめるという観点でアドバイスをすることが多いですね、出来立てが綺麗なのは当たり前ですから。一般的なデザイナーよりは材料のことを知っていますし、一般的な職人さんよりもデザインのことを知っているので、スペシャルというよりはジェネラル寄りの少し変わった立ち位置で全体を見ることができることも差別化であり強みの一つだと思っています。」

Q.御社の今後の展望をお聞かせください

「もっと仲間が増えるといいなと思っています。私たちのように、ちょっと建設業からはみ出しているけれど、作ったお店に来てくれたお客さんが何かを感じてくれるようなものづくりとデザインを提供できて、そこに来る人々との良い関係を築けるような仲間が増えると嬉しいですね。

私はあまりビジネス精神を持っているタイプではなく、ただ創りたいという気持ちが強いので、我ながらもっと上手くやれよと思うこともありますが(笑)ビジネスベースではない、何か良さを共有できる仲間たちが増えていったら楽しいだろうなと思うんですよ。大きな商業ビルに色々なテナントが並んでいるのも良いかもしれませんが、私の感覚では、あまり長居する場所じゃないなと感じるんです。

もっと作り込まれた時間の流れや空間が、自分に合うなと感じられるお店というものがやはりあって、自分が提案したデザインにもそういう風に誰かが共感してくれたら嬉しい、そういう思いだけで仕事をしています。ものづくりの職人さんは、昔からそういう気持ちで仕事をしていたんじゃないかと思うんですよね。焼け野原になってしまった日本を、何もないところから試行錯誤して作り上げていった結果が現代のベースになっているわけで、私もそういうプリミティブな精神でやっている感じです。」

阿部 大輔氏 プロフィール

プロフィール 埼玉県さいたま市生まれ。 美術大学卒業後、渡豪。 帰国後一人親方として独立し、 2015年株式会社NUB設立。 企業概要 店舗、住宅の内装デザインから施工を主に、 家具のオーダーメイドの受注、 その他のデザイン、製作業を行っております。 「考えることと、手を動かすことは一対である。」を信条に、内装、家具、プロダクト、どの分野においてもプランニング・デザイン・製作を一貫して行っています。実際に手を動かし、製作している工程で生まれる瞬間の気づきを、全体感や細部に反映し、常に更新していく。分業化と細分化が進む現在では、それが私たちの強みであり、他にはない〈 NUB 〉らしさです。