価格競争に負けない中小企業の生き残り戦略:ライフアップ住設株式会社 井上 敏郁氏

価格競争に負けない中小企業の生き残り戦略:ライフアップ住設株式会社 井上 敏郁氏

会社名:

ライフアップ住設株式会社

代表者:

井上 敏郁

取扱業務 一般住宅・マンションの水まわりリフォーム工事 給排水設備の修 理・ メンテ ナンス工事
配 管 工 事・ 公 共 工 事等 ・各 種 申 請 業 務 衛生浄化槽設備 工事
水道管 漏水調査及び修繕工事

Q.いまの御社の事業内容について、教えてください

「水道工事業ですね。主にふじみ野市を中心として、一般住宅や集合住宅、アパートやマンションの水回りの修理やリフォームを行っています。

具体的には台所やトイレ、洗面所など水を使っている所を対象としていて、やはり長く使っていると水が漏れたり排水が詰まったりしますので、そうした場合は急ぎの対応になりますね。また、お風呂を新しくユニットバスにしたり、システムキッチンを新しく入れたり、といった水回りを中心とした工事も手掛けています。

各自治体には指定工事制度というものがあるのですが、弊社はふじみ野市を中心に10か所ほどで上下水道指定工事店を取得しておりまして、どちらかといえば一般のエンドユーザーをターゲットとした事業展開です。」

Q.これまで、どのようにして現在に至ったのか、教えてください

「2011年の10月1日に私一人で設立しまして、それまでは同じ水道工事関連の会社に、大体20年ほどサラリーマンとして勤めていました。2011年といえば東日本大震災が発生した年で、景気も凄く冷え込んでいて、本当に仕事が無いような状態でのスタートでしたが、今では社員さんが3名と事務員さんが2名という体制でやっております。

私自身は東京都の出身で、当地が地元でないこともあり、創業時は知名度がほとんどゼロに近い状態でした。そこで、まずは会社を知っていただこうと活動を始め、チラシを配ったり、ロードサイドに看板を設置したり、役所が発行している便利帳の広告スペースも活用するなどして、少しずつ地元を中心にお客様を増やしていき、今に至るという感じです。」

Q.現在の建設業界について、どう思われますか?

「やはり大手の参入により、水道のリフォームなどもオンラインで依頼できるようになったため、値段で決める人も出てきていて、差別化の必要性が高まりましたよね。例えば大手にできない、我々のような中小企業ができることの1つは小回りが利くということだと思います。ネットで探せば安いところは他にあるかもしれませんが、弊社を信頼して相場で依頼してくれるお客様と繋がることが大事だと感じているところです。

ちょっと修理をお願いしたい、と便利帳を見て朝の8時半くらいに電話が来たとして、9時にはお伺いできるのはもうご近所だからこそですよね。24時間対応の大手でもできないことはないでしょうが、やはり高額になる、一般の相場で対応するのは難しいでしょう。

他と同じことをしていたらどうしても価格競争になってしまいますから、しっかり対応してちゃんと普通の値段でお金をいただくことを考える必要があると思います。できれば競争はしたくないですよね。」

Q.御社の成功要因について、教えてください

「既に少しお伝えしたように、広告には力を入れてきました。60代〜70代からのご依頼が多く、便利帳は意外とご高齢の方を中心によく目を通されているようで、割と効果がありますよ。今はネットで調べる方も多いと思いますが、まだまだ高齢者だけの世帯も多いので、こうしたアナログ的な宣伝も必要なんでしょうね。また、水回りの設備がないというお宅の方が少ないと思いますので、やはり生活の中で目に付く所に宣伝を打つということは意識していて、多少の費用は必要ですがバスのラッピング広告なども出しています。

更に3か月に1回、春夏秋冬で季刊誌を発行しておりまして、業者へ依頼してふじみ野市を中心にポスティングをしてもらっています。これはもちろん会社の宣伝を目的としているのですが、あまりそうしたセールス感は打ち出さず、近所にこういう水道工事業者がいるんだよ、と少しでも多くの人に認知してもらうために、定期的に同じ所へ入れてもらっているという感じで、もう7〜8年は続けていると思います。

水回りの修理については、24時間対応を前面に打ち出して、素早く対応しますと宣伝しているのをよく見かけると思うのですが、そうした事業者は結構値段が高いんですよね。弊社は異なるアプローチで、地元の業者として早く駆けつけることができる存在を目指しておりますので、地域に貢献できるような活動もしています。毎年5月に開催するイベントの企画を行っている他、フラダンスや楽器の演奏などをしているサークル団体が発表する場を無償で提供する、といったことですね。

地元の会社が開催しているイベントなどに、ボランティアで協力すると皆さんが喜んでくださいますし、市の懐も痛みませんからふじみ野市長も凄く喜んで、どんどんやってください、みたいな感じです(笑)。儲けには繋がらないかもしれませんが、会社の在り方が大事であって、やはり自分たちだけが儲かれば良いという考えでは、長続きしないと思うんですよね。

しかし、こうしたことは赤字続きで経営が大変だと出来ませんから、しっかりと自社の舵取りもしつつ地域に根ざした活動も出来るということが重要なのかなと。利益を追求することは当たり前かもしれませんが、そればかりでも良くないという考え方は、中小企業家同友会で教えてもらったようにも思いますので、同会には入って良かったなと思っています。同じ経営者同士で学び合う場も大切ですよね。また、横のつながりは多い方が良いでしょうから、基本的には誘われたら断らないスタンスで、起業してすぐに商工会にも入りました。

他にも日総研に入るなど、とにかく勉強がとても大事だと思っています。ちゃんと利益を伸ばしていくために経営計画の作り方も勉強しましたし、決算書を読めるか読めないかでも違いが出るでしょうね。こうして地道に学んで実践してきたことが、右肩上がりの結果につながっているのかもしれません。合わなかったらやめれば良いので、自社にとって本当に必要かどうか、取り敢えずやってみて判断するようにしています。」

Q.建設業で成功するためには、どのような組織や採用、教育が必要か?

「採用についてはネットや職安、ご紹介など様々な経緯で入っていただいています。教育は特別に何か構えるというよりも、毎朝の朝礼で話をしたり、時間がある時に雑談として話しているような感じですかね。特別な教育はしていませんが、社員さんがいきいき働ける職場環境を作ることは常に意識しています。

実は長く勤めてくださっている方が多いんですよ。もちろん不満はゼロじゃないと思いますが、比較的やりたいようにやってもらって、あまり口を出さないようにはしているので、任せているから長く続く、ということはあるのかもしれません。2人〜3人で協力しないと出来ない仕事も、お互いに相談しながらやってくれていますよ。基本的にはお任せしながらも、フォローはしっかりしてあげたいと思っています。

また、働きやすい組織として休みを増やしてあげることも意識していますので、週休2日は実現できていて、3年ほど前から基本的に土日はお休みです。休みが少ないと条件面で採用が不利だということもあり、土曜日出勤が当たり前だった建設業でも少しずつ休日にするところが増えていますし、材料屋も土曜日は半日しか開けていなかったりしますので、そうした流れに合わせていく必要もあると思っています。ただ、稼働日が減ることによる労働生産性や利益率の低下については対策を考えなければいけませんね。」

Q.今後、建設業界はどうなっていくとお考えですか?

「運送業界もそうですが、とにかく人手不足であるにも関わらず自動化が難しい業種だと思っています。ですから状況を見てということにはなりますが、価格競争を避けるためにも付加価値をしっかりとつけていくことが必要になるでしょうね。

値下げどころかむしろ材料の高騰による値上げが必要な状況で、ここ1年の利益率はかなり低下していますから、弊社でも新しい単価を作ってサービスを提供していかないと厳しいです。大手はどんどん賃上げしているものの、中小企業は追いついていないのが現状ですから、値上げしやすいこの流れで社員さんに給与還元できれば良いなと思っています。

また、これも建設業だけの問題ではありませんが、職人さんの不足による後継者問題は深刻です。私も55歳ですから、あと10年以内には誰かへ引き継ぐということを考えて動いています。10年というと先のようですが、事業承継は前後の5年間など引き継ぎ期間も大事ですからね。お客様のためにも事業の継続は使命であり、引き継ぐ人がいないのでやめます、という訳にはいかないと考えています。」

Q.御社の今後の展望をお聞かせください

「仮に何か自然災害などの問題が発生して1年間仕事がなかったとしても、社員さんへ給料が払えるくらいの強固な事業基盤を作りたいと思っています。これは今でも可能ではありますが、やはり会社の資産も増やしたいですしね。優良企業は自己資本比率が30%くらいだと言われていますし、会社にどのくらいお金を残すか、ということもきっちり考えていきたいです。

また、会社に利益が出れば給料が上がるんだよ、ということを示したいと思っています。例えば3年以内に1.5倍にしようと思ったら、こうしないとダメだよね、という風な頑張れる切欠として数値を出せたら良いですね。最近、勉強している中で年齢✕15倍が理想の給料だと、例えば40歳だったら600万円だという目安を知りましたし、10年後には大卒の初任給が30万円になるのでは、とも言われているように、そこまではいかないにしろ給与ベースは上がっていく流れになるだろう、という背景も考慮しています。

多くの会社は、中期でこれくらいの売上にしたいから今年の売上はこのくらい、利益はこのくらいという風に計算して計画を立案をしていると思いますが、みんなの給料をこのくらいにするにはこのくらいの利益がないとダメだよね、という組み立て方をすることが大事ではないでしょうか。

このような考えをベースに、弊社のビジョンの1つでもある、地域に必要とされる会社として、みなさんが安心できる水回りの関係の仕事を続けていきたいと思っています。」

井上 敏郁 プロフィール

平成23年 ライフアップ住設 創業
平成25年 商号をライフアップ住設株式会社 とする

町の小さな水道工事店の見習いからスタートし、清掃会社の建設部門に転職。
オールラウンダーとして技術を磨きながら資格を取得し、社員数250人程度と、そこそこの規模の会社の取締役を経験した末、関連会社の代表を任されるまでになりました。
  独立後の現在は前職で培った経験・感覚と信用という基礎の下に、網の目のように張り巡らせた
官公庁と民間部門の人脈というパイプを活用し、顧客のニーズに対する解決策を、このパイプを通じて
スムーズに提唱できるのが強みです。

かかわる全ての人々に、それぞれのライフスタイルに最適な提案を通じて、自在性と快適さの実感から、満足度アップのサポートをしてゆきたい・・・そんな思いを屋号に込めました。
これからも、ライフアップ住設を維持発展させながら「地域に必要とされる会社」になることを目指して日々がんばっていきます!